お び し ゃ
 おびしゃは、関東地方の新年行事で、とくに千葉県の利根川沿いの東葛飾・印旛・香取郡、および九十九里沿岸の山武郡・長生郡地方で多く行われている。
 おびしゃは、神社の他のいろいろな祭りにくらべると、行事が行われる場所は、せいぜい神社の中と社殿の前、氏子の家などで、また、参加する人数も、拝殿に入れる程度で行われるきわめてファミリーでプライベートな行事といえる。
 おびしゃには、奉射、奉謝、奉社、備射、備社、鬼射、毘舎、毘沙などの漢字が当てられているが、もともとは、「御歩射(おぶしゃ)」が訛ったもので、馬に乗って行われる「流鏑馬」に対し、立って、あるいは座って弓を射て、ぞの命中度で吉凶や豊作凶作などを占う農村の神事である。奉射、備社は神事からきており、また毘舎、毘沙は神仏混淆からきているとされている。
 今では弓を射ることは少なくなり、単に豊作や安全を祈ったり、村の人たちの酒を酌み交わす場になっているところが増えているといわれており、村の賀詞交歓会、あるいは新年互礼会といったところか。
 100件近く行われているという千葉県などのおびしゃの一部を紹介する。
地   区 内     容
鰭ヶ崎おびしゃ
場所:流山市鰭ヶ崎
  雷神社
日時:1月20日15.00〜
享保年間(1716〜1736)に始まったとされ、弓を射て豊作を祈る行事。
拝殿内で、御払い・祝詞などの神事の後、裃姿・七福神などの格好をした人たちが、鬼の顔を書いた的に矢を射る。
神事のあと宴会があり、七軒が当番となり、行事を運営する。かっては備社田という共有の水田を当番が耕作し、費用を賄っていたといわれている。弓射と神楽が残っている貴重な行事。
鰭ヶ崎おびしゃ 鰭ヶ崎おびしゃ2
2003年1月20日に今では少なくなった弓の射が行われた。的に当たった結果による吉凶の占いはされなかった。 紙を貼って作った的には赤・青鬼が描かれている。
奈土のおびしゃ (千葉県録選択無形民俗文化財:平成4年指定)
場所:磐裂神社
千葉県香取郡大栄町
  奈土五・六区
JR成田線下総神崎駅から車で約15分
日時:2月13日
午前中、磐裂神社において神職や区長など少数の人たちにより、五穀豊穰・家内安全祈願の神事が行われる。
午後、五区・六区に分かれ、古式にのっとり、行事が行われる。行事の内容は、五区・六区で違う。
五区では、酒席と悪魔払いなどの獅子神楽が五座行われる。獅子神楽は、座敷の宴卓を取り払った跡を舞台にして二人立ち一匹の舞いが行われる。五区と六区で雌雄にわかれているがお互いの交流はないという。囃子は、笛5〜6、長胴太鼓、締太鼓、鼓など座敷の縁先の庭で演奏される。
六区では、神主当番の家に作られた結界の神の依代を囲んで、奈土地区の四十数戸の戸主たちが神と一緒に酒を飲む。14時頃高砂の謡を始めに朱塗りの盃になみなみと注がれた酒を飲み始め、座を替えながら夕方まで続くという。最後に獅子神楽が行われる。次期神主は、背中に"神の依代"をさし、近くの三又の分かれ道に出向き、再び盃のやりとりを行うという。結界には、鶴亀、生きた鮒、その他お供物が供えられている。
“奈土のおびしゃ”というが、弓を射るなどの行事はない。その他不幸のあった家は、五区は1年間、六区は35日間地区の行事に参加できない、月二回神社の掃除を交替で行っているなど、昔からのしきたりが守られているようである。“奈土のおびしゃ”も、細かいしきたりに乗っ取り行われている。
気軽に写真を撮らせて貰え、また、外来者も座に着き酒を飲むなども行われているとのことで、暖かい雰囲気の中で行われた。
結界の神の依代を囲んで、奈土地区六区の四十数戸の戸主たちが神と一緒に座を替えながら酒を飲む 二人立ち一匹獅子舞
六区では、神主当番の家に作られた結界の神の依代を囲んで、奈土地区六区の四十数戸の戸主たちが神と一緒に座を替えながら酒を飲む。 五区で行われた珍しい二人立ち一匹獅子舞。囃子は、縁先の庭で演奏される。
鳥ビシャ
場所:千葉県沼南町
G泉地区:妙見社
 10.00頃から約30分
JR常磐線柏駅東口から東武バス4番泉下車徒歩5分
G鷺野谷地区:星神社
 13.00頃〜
JR常磐線柏駅東口から東武バス4番鷲野谷下車徒歩5分
日時:2月22日
問合先:沼南町役場社会教育課:04−7191−1111(303)
鳥ビシャは、正月の行事で泉地区、鷺野谷地区の妙見社と星神社に氏子が集まり、神事が行われる。
午前に行われた泉地区妙見社の場合は、拝殿に「相馬北斗太神」の軸を掲げ、設けた祭壇の中央にしん粉餅で作り赤・青などに彩色した数羽の小鳥(当番の家がつくる)を留まらせた木と米・酒・肴・野菜など、竹枠に“鬼”と書いた紙を張った的が供えられる。
神職と11人の氏子により行われた祭式次第は、つぎのとおり。
一、修祓の儀
一、献饌の儀
一、祝辞奉上
一、箭弓の儀
一、玉串奉呈
一、撤饌・御神酒
神職の祝辞を聞くと、「新しい年も災難がない、家内安全・商売繁盛で幸せな年であるように」との内容であった。
「箭弓の儀」は、拝殿の中で神職と区長、氏子総代が“鬼”と書いた的に矢を放ち、邪鬼や害鳥を払って新しい年の豊作などを祈願する。
「鳥ビシャ」の名前の由来は、半紙に書いた“烏”や“鬼”の的を弓矢で射り、農作物の害になるカラスや鬼を追い散らし、豊作を祈願することによる。
祭壇の横で、箭弓の儀で弓を射る神職。 枝振りのよい古木に数羽の鳥が留まっている。
祭壇の横で、箭弓の儀で弓を射る神職。 枝振りのよい古木に数羽の鳥が留まっている。
にらめっこおびしゃ・御奉謝
場所:千葉県市川市大野
  駒形大神社
日時:1月20日
詳細は、「にらめっこおびしゃ」参照。
髭撫祭
場所:千葉県佐原市大倉
  測高神社
日時:1月10日
詳細は、「髭撫祭」参照。
船戸のおびしゃ
場所:千葉県柏市船戸
  船戸会館
日時:1月20日前の日曜日
元和年代の中頃(1620頃)から始まった、弓を射て年の吉凶を占い、豊穣を祈る農村行事行事であったが、現在、的射は行われていない。
新年に当番が交代し、氏子当番の人たちが神前の供え物から酒肴膳部の準備をし酒宴の中で「三助踊り」「三番叟」「おかめ踊り」が演じられる。
昔は、4区域の旧家4軒で行なわれていたが、大正7年(1918)からは「医王寺 」で、平成6年(1994)からは「船戸会館」で行なわれている。
本三倉のおびしゃ
場所:千葉県多古町本三倉
  側高神社
日時:1月中旬10.00〜
集落に祀られた鎮守の年始行事で、除厄を目的と人々の親睦をはかる。
神社前で神官など関係者が「手水の儀」で身を浄め、拝殿で儀式のあと、座奉行といわれる進行係の口上により、番付けにしたがって、座奉行の指示により触れ役が、その都度進行を満座に告げ、酌人によって大きな盃で酒がふるまわれる。
番付けは、一番御雑煮餅・二番御神酒・三番御内板・四番御末那板・五番御名付・六番御鯰・七番御頭渡などのメニューである。(詳細不明)
トリオビシャ
場所:千葉県印西市浦部
  妙見神社
日時:2月22日

「トリオビシャ」と呼ばれ、妙見神社の氏子の中村一族に伝承される行事でしん粉餅を鳥の型にし、竹や梅の枝につけ、わらを束ねたものに挿したものを床の間や妙見神社に供えて家族や親類の安全を祈願する行事。前日に久しぶりに一族が集まり、トリを作る。
日秀のおびしゃ
場所:千葉県我孫子市日秀
日時:1月6日
多くの集落で「オビシャ講」が現在でも行われている。おびしゃは、豊作を祈願する正月の弓神事で、昔は3日3晩の酒盛りをしたといわれる。
日秀地区の人たちは、「オビシャ」を通じて集落の契りを固め、この伝統を今日まで守ってきたといっている。
男おびしゃ
千葉県東金市
場所:熊野神社
日時:1月20日
家長が行う氏神様の農業の神さまの熊野神社に豊年万作をお祈りする。集落によって祭神が異なり、日取りも違う。
Gおびしゃは当番制で、今年の施主の宿、来年の宿の上当(うわとう)、去年の宿の下当(したとう)により行われる。
組の人たちは、おびしゃによって固く結ばれて、地縁を大事にし喜びも悲しみもお互いに助け合って、長い歳月を今日まで過ごしてきたとされている。
女性は、28日に女びしゃを行う。
貴船神社のおびしゃ
場所:千葉県東金市
  貴船神社
日時:1月4日
2軒ずつ交代で行うおびしゃ当番の引き継ぎをする際に的に矢を射って豊凶を占う伝統行事。矢を扱う人は"的子"と呼ばれ、"ヒモトキ"を終えた7歳から15歳までの少年1人がなる。実際に矢を放つのは、的子の"トリアゲ"役をしたトリアゲ爺が行い、1本目の矢は神矢で空に向かって放ち、このあと的に12本の矢を射る。的の周りには、九十九里町旧豊海地区の氏子が待ち受けて矢を奪いあう。矢を持ち帰ると豊漁になると伝えられている。 夏びしゃ、冬びしゃ(春季御歩射)がある。
鬼射(市指定民俗文化財)
場所:下田市落合・
  稲梓落合白山神社
日時:2月1日
その年の災厄を払い,五穀豊穣を祈願したとされる。行事は、弓太郎(ゆんだろう)、役者2名、シャクトリ2名が中心となり、前日より身を清め、浜垢離をする。当日は神事のあと、弓太郎が、その年の厄を払い、豊作を祈願して、「鬼」と書いた的を射る。
歩射神事(ほしゃしんじ)
場所:熱田神宮
日時:1月15日
豊年と除災とを神に祈る神事で、神楽殿前庭で行われる。俗に「御的(おまとう)」とも言われている。
初立・中立・後立の各2人の射手(神職)が矢を2本づつ、各3回奉射する。
最後の矢が射ると同時に参拝者が一斉に大的を目指して押しかけ、特に大的の千木は、古来より魔除けの信仰があり、多数の参拝者がこれを得ようと奪いあう。
歩射祭(おびしゃ)
場所:神奈川県川崎市
  中原区上丸子山王町
場所:丸子山王日枝神社
日時:1月7日

境内で、徒歩で的に矢を放ち、五穀豊穣を祈願するとともに、その年の豊凶などを占う行事。当番町会から選ばれた男の子と大人2組が烏帽子に直垂、烏帽子に白丁姿で神前儀式のあと、境内で的に矢を放ち、さらに天にむかって矢を放つ。五穀豊穣の祈願と、その年の豊凶と作物の奥手か早生か、または葉物か根菜かの作付 けを占うといわれている。昔は、「タンパタ ンパ」と呼ばれていた。

おびしゃ
場所:印西市鹿黒
日時:1月15日
拝殿に集まった氏子は、神官による祝詞・玉串奉奠、神酒をいただいたあと、一同は外に出て、神官、総代、氏子の順で2つの丸い的をめがけて矢が射られ、その弓矢の当否によってその年の吉凶を占ったり、また、「鬼」と書かれた鬼的を射ることで、悪魔払いをする。
歩射のあと、「頭渡し」という酒宴が行われる。
献魚とお的祭
場所:匝瑳郡野栄町野手
  ・六社大神
日時:1月7日
神職、総代、座持、付人等が参加して行われる。奉仕者は前日潔斉の上お的、弓、 矢を作る。弓矢は共に竹製で、お的は円形で、白紙にカラスを現す卍が描かれている。
当日は、神職、総代が射た各3本ずつの矢の3本を宮司が上空、中空、地上に射て悪虫、悪鳥、悪魔除の祓をする。的に当たった場所によって、年穀の豊凶、早水、風雨、漁の吉凶を占う。
その後、拝殿において、参列者は東西に分かれて酒の飲み振りを競う。
また、下社家献魚の錬二尾に宮司は「包丁入」の所作をする。「千早振る神の御前を清めつつ宮に捧げる大海のひろむの」と三度高唱し、料理して参列者に配る。無病息災を願い各自家に持ち帰りお祝いをする。
のう漬づみ(歩射)
場所:香取郡東庄町高部
  ・稲荷神社
日時:1月15日
社殿の前に立てた、藁製の円形の的に、参列者2人ずつがすわったまま弓に矢を射たあと、その場に平伏すると、若者たちがその上に幾重にも重なり合って「のう(稲村)」を積む。人を稲の「のう」になぞらえ、その高きを競う行事が行われていた。
(「のう」の意味不明)
奉幣祭
 (ほうへいさい、おびしゃ)
場所:市原市五井
日時:1月第3日曜日
氏子内の当番家に斉庭を定めて祭壇を舗設し、区長が祭主を奉仕して祭壇に幣束を奉安し、神酒、飯米、野菜を奉献して礼拝を行い、次で直会の儀が行われる。直会後は、祭主が幣束を捧持し、当番はじめ参列者全員が供奉、意中、木達唄を高唱しながら大宮神社に向う。同神社では、神職が幣束を受け取り、神前に奉奠する。この神事は、春祈祷の一種で、五穀豊穣を祈願するためとされる。
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Page Last Updated 2005.1.20
「鳥ビシャ」 追加 2004.2
「奈土のおびしゃ」 追加 2004.2

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