神  楽
 神楽は、神座遊の略語の神遊ともいう。「かぐら」の語彙は、「かみくら」の音便の「かむくら」の「む」が省かれて「かぐら」になったとされる。
 神楽は、もっぱら、神前で奏する歌舞(芸能)で、「 御神楽(みかぐら)という皇居および皇室との関連が深い神社で神をまつるために笏拍子(しゃくびょうし)・篳篥(しちりき)・神楽笛・和琴(わごん)の4種類の伴奏楽器に合わせて奏する歌舞(毎年12月に賢所でも行われるものなど) 」や、「 里神楽という民間の神社の祭儀で、大太鼓・小太鼓・手打鉦・笛の伴奏にあわせて、生れた土地の守り神である産土神(うぶすな)を奉るための歌舞 」をいう。
 神楽の起源は、天照大神が天岩窟に隠れたとき、岩窟の前で、天鈿女命が、天香山のまさきの葛を鬘(かつら)にして、日陰の葛を手繦(たすき)にして、竹の葉と飫憩(おけ)の葉を手草として、手に鐸をつけた矛を持ち、槽を踏みとどろかせて歌舞を舞ったのが始まりであるとされている。神社の祭祀のときに神楽を行うのは諸書にも見られるのでかなり古くから行われていた。
●里神楽の概要は、次のとおりである。
G里神楽の分類の一例 (「埼玉県の民俗芸能」による分類)
分 類 凡 例 芸 能 名
巫女神楽 岩手県・陸中沿岸地方の神子舞、長崎県・命婦の舞 巫女舞、八乙女舞、大神楽、小神楽
出雲系神楽 江戸の里神楽、宮城県雄勝法印神楽 岩戸神楽、神代神楽、太々神楽、法印神楽、土師流神楽、里神楽、十二座神楽、二十五座神楽、神舞
伊勢系神楽 太神楽(伊勢神宮に奉納する神楽) 由立神楽、湯花神楽、霜月神楽、霜月祭り、冬祭り、花祭り、お潔め祭り、遠山祭り
獅子神楽 岩手県陸中沿岸地方の廻り舞・黒森神楽・鵜鳥神楽、秋田県本海番楽、岩手県鴨沢神楽 山伏神楽、権現神楽、番楽、獅子舞、能舞、太神楽
G神楽殿
 一般に里神楽は、神社で奉納されるために、神社には神楽を奉納するための「舞殿」「高殿」などと呼ぶ神楽殿がある。神楽殿がない場合は、拝殿で奉納される。
 神楽殿は、古代中国から伝わった「陰陽五行思想」を取り入れ、神楽殿を中心に東、南、西、北を示し、舞座は大地を表し、上部は天空を表しているという。
G奏楽
 奏楽に楽譜はなく、口伝で伝わったものを大太鼓などの奏者が中心になって演奏される。また、複数人の舞いの場合は、人長の指揮により行う。
G衣裳
 狩衣(かりぎぬ)、水干(すいかん)、千早、鎧、半切、直垂、長絹(ちょうけん)、四天、肩切、打掛、大口(おおくち)、法被、石帯などを着る。
G面
 一般に神楽は面をつけて行い、明治中期以降は一般に、和紙でできた「張子面」が使われている。それ以前は、能面と同じ木彫りの面を使用していた。張子面は、軽くて使い易く、また、作りやすく、量産できるなどの利点がある。
 神楽面は、演目によって、「 神面(素戔鳴尊、天鈿女命、天手力男命、天若日子命、足名椎命、稲荷大神、大国主神、建御名方神など) 」「 鬼面(酒呑童子、大疫神、鬼女など) 」「 姫面(櫛稲田比売命、手名椎命など) 」「 剽面 」「 大蛇面 」「 狐面 」「 獅子頭 」などを使う。面をつけない神楽もある。
G演目
 地方によっていろいろあるが、例として次のような演目がある。
 稲荷山、天孫降臨、日本武尊、素戔嗚尊の八岐大蛇退治、素戔嗚尊の熊襲征伐、神武東征、紅葉狩、敬神愛国、天之岩戸、翁三番叟、神子舞、神明の舞、恵比寿、榊葉(ささ)の舞、玉取り舞火男(ひょっとこ)の舞などその数は多い。
十二座神楽
 出雲系神楽の一つとされ、神慮を慰めんとする神事の一つであると同時に、天下泰平・五穀豊穣・地域の平穏などを祈願して奉納される。“座”とは、里神楽などで、曲の数を数える語で、“十二座神楽”では、十二の歌と踊りが行われる。十五座、十七座、二十四座、二十五座などいろいろあり、古くは“一座”を一時間近くかけて行われていたが、近頃は、時間を短くしたり、座数を減らすところが多い。
G演目
 岩戸開の舞、山祗の舞、三宝荒神の舞、五行の舞(稚児舞)、天狗の舞、春日の舞、蛭子の舞、鍛冶の舞、錮女命の舞、榊葉(ささ)の舞、火男(ひょっとこ)の舞、新榊の舞、剣弓の舞、二剣の舞など神社によりいろいろあるが、近隣の地域はお互いに影響し合って似た演目が多い。
G舞い
 演者は、例えば、「岩戸開の舞」は天鈿女命・天手力男命、「山祗の舞」は大山祗命、「尉の舞」は天児屋根命・天太玉命などの舞神に扮し、それぞれ、演目に合った神面、鬼面、姫面などの面をつけて舞う。
太神楽 (だいかぐら)
 太神楽は、神社に伝わる「伎楽(ぎがく)・散楽(さんがく)」の一部で、伊勢神宮・熱田神宮の二ヶ所が発祥の地といわれている。その後、江戸時代に、神主が獅子舞を連れて氏子の家々を廻りお祓いをする風習が生まれ、神様に代わって悪魔祓いの獅子舞を演じたことから、代神楽とも呼ばれていた。
 太神楽が生まれた当時は、神様への「奉納」・氏子への「祈祷」などがおもな目的であったが、寄席ができると「舞台芸能」へと変化し、獅子舞の余興として演じられていた曲芸とともに娯楽的要素の強い芸能となった。
 太神楽は、次の四つの芸能がベースになっている。
G舞(獅子舞・恵比寿大黒舞)
G曲芸(撥・鞠・ナイフ・輪などの投げもの、傘・五階茶碗・皿などの立て物)
G話芸(源三位頼政・五段目・雀踊り鹿島の舞などの掛け合い茶番
G鳴り物(下座音楽・祭囃子など)
 主な演目には、曲撥、長撥の曲、曲鞠、傘の曲、花籠鞠の曲、五階茶碗、水雲井の曲、末広一万燈の立て物、土瓶の曲、皿の曲、曲独楽などがある。
江戸里神楽
 埼玉県鷲鳥宮神社で始まった「土師流催馬楽神楽」が江戸へ入り、催馬楽が黙劇風の筋になった。現在、正統の江戸里神楽を引き継いでいるのは、蔵前・若山胤雄、品川・間宮社中、荒川・松本社中」といわれる。蔵前・若山胤雄の演目は、「菩比神使」「天之返矢」「幽顕分界」「神功皇后と武内宿禰の八幡山」などがある。
催馬楽(さいばら):平安時代に作られた流行歌の一つ。民謡や和歌を雅楽風に編曲したもの。他に漢詩に曲をつけた朗詠がある。笏拍子・竜笛・篳篥・笙などを伴奏にして数名で斉唱する。
波除稲荷神社 若山胤雄
地   区 内     容
明神社の神楽
  (十二座神楽)

G日時:10月17日
G場所:千葉県沼南町塚崎
Gアクセス:京成電鉄・逆井駅下車徒歩約1時間
 明神社の大祭に、神楽殿において奉納上演される神楽で「塚崎の十二座神楽」という。
 神楽は、古代神話をもとにしており、巫女・猿田彦・湯笹・狐・恵比寿・餅投げ、鍾馗、玉取り、天宇妥女命、大幣、大蛇退治、天岩戸の十二の演目からなる。
 代々塚崎地区の長男によって継承され、寛文九年(1669)には、すでに神楽舞が行われていたとされる。神楽殿に奉納されている、絵馬や境内の手洗鉢などの年代から推測すると県内では古い年代から舞われていた里神楽といわれている。
●沼南町無形民俗文化財に指定されている。(昭和50年)
●手洗鉢には、「敬白 信心丹那 奉納庚申待成就 寛文九年巳
酉年 御神楽殿」とあり、この時期にすでに十二座神楽が行われていたことを示している。

(出典:沼南町教育委員会資料など)
鳥見神社・浦辺の神楽
  (十二座神楽)

G日時:10月17日
   15.00〜21.00頃
G場所:千葉県印西市浦部
Gアクセス:JR成田線木下駅下車、レインボーバス・平井車庫行・永治小学校下車徒歩約15分
 慶安元年(1648年)の創建とされる鳥見神社の秋季例大祭(10月17日)に奉納上演される神楽で、名称は「浦部の神楽」。神楽社中は代々氏子の長男を主として伝承されてきた。
 地元では「十二座神楽」とも呼ばれ、江戸時代初期、八千代市村上から伝えられたとも、旗本上杉家(地頭)の祈願所として、鳥見神社を鎮座した際に江戸より求め伝えられたともいわれている。
●十二座神楽の演目
G一 神子舞(みこ):座を清め、神霊を招き迎率る。
G二 翁 舞:座がための舞
G三 神明の舞:五穀(米、麦、粟、黍、豆など穀類)の元祖、稲荷神が鍬を以って土地を耕す。その耕地に神狐が種を蒔き、五穀豊穣を予祝する。
G四 鈿女の舞:天鈿女命が、弓矢を持って敵対する神々を問い正し、天孫降臨の先導をする状を舞う。
G五 恵比寿舞:魚釣りの好きな事代主命が、出雲国美穂崎に遊行し、魚釣りを楽しむ状を舞う。豊漁を祈る舞。やがて、魚に化身した岩長姫を釣り上げる。
G六 鍛冶の舞:天一箇命と石凝姥命が、鍛冶の槌をとり神剣を造る。金物を打ち、武器や道具などを造るための祈り。
G七 榊葉(ささ)の舞:天照皇大神が、天之岩屋戸にお隠れになった時、天釦女命が神軍の依代としての榊の小枝を手に舞う。
G八 二匹天狐の舞:天狐と地狐、陰陽二柱の神狐が神霊の発動を祈り、新たなる生命の強化を祈る。
G九 玉取り舞:姫が鬼に奪われた玉を、武鏡槌命が奪い返して姫に奉げる。
G十 大蛇の舞:素戔嗚尊が大蛇を退治して剣を取り出し、櫛名田姫を娶る。
G十一 天之岩戸の舞:岩戸にお隠れになった天照大神の復活を祈り、猿田彦命と天細女命が舞い手力男命が大神を外に導き出す。天岩戸前神事の舞い。
G十二 火男(ひょっとこ)の舞:火男が餅を盗むのを見て、大山砥命が取り戻す。最後の舞で「ぶっきり舞」とも言う。
●千葉県無形民俗文化財に指定されている。(昭和42年)
(出典:浦辺神楽社中パンフレットなど)
本矢作伊勢神楽
   (獅子神楽)

G日時:
  3・4・12月13.00頃〜
G場所:千葉県佐原市
  天宮神社・天降神社
Gアクセス:JR成田線佐原駅
江戸時代の中頃、本矢作区の天降神社、天宮神社が造営されたとき、この神楽が奉納されたと伝えられている。
神楽は地区の災難・病気などの悪魔を払い、天下泰平、区内安全、五穀豊穣を祈願する。
毎年、3・4・12月に行われる。
絵は、佐原の大祭・秋祭りのにぎわい広場で行われたイベントに出場した保存会による「本矢作伊勢神楽」。2人1匹獅子舞で、獅子頭は、唐獅子系。
本矢作伊勢神楽 本矢作伊勢神楽
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