屋根の形状
 日本の建築の構造は、時代的に次の3つに大きくわけられるという。
 一.原始時代〜仏教伝来 (〜飛鳥時代)
 二.仏教伝来〜西洋文化伝来 (飛鳥・奈良時代〜江戸時代後期)
 三.西洋文化伝来〜現代 (江戸時代後期〜現代)

 “ 一 ”の六世紀の仏教伝来以前の神社の建築は、大嘗宮正殿や校倉などが社殿に転用されたのが始まりで、切妻屋根の建物であった。住吉造・神明造・大社造などがある。

 仏教が伝来すると、その寺院では、次のような様式の建物が造られた。
・和様:奈良時代に中国の唐から入り日本的に完成した様式で、王院本堂(三十三間堂)・平等院鳳凰堂・興福寺東金堂などにみられる。
・大仏様:和様の建物が平安末期に平重衡による戦禍でほとんでが失われた後、鎌倉時代初期に、重源(注5)が東大寺の再建に採用した宋の建築様式。この様式は、挿肘木を使うなど各部材を規格化して種類を減らした合理的な建築であったが、挿肘木を使うなど部分的には次の様式に受け継がれたが、建築様式としては続かず、残っている建物も少ない。東大寺南大門・鎌倉の浄土堂にみられる。天竺様とも呼ばれる。
・禅宗様:唐様とのいい、奈良時代に禅宗が栄西禅師が中国から移入されたのといっしょに伝えられた建築様式で、建物の内外とも繊細で技巧的で装飾的といわれる。
 これらの寺院の建築様式の影響が神社の建築にもおよび、直破風の切妻屋根が反りのある屋根になったり、高欄をめぐらした回廊が設けられたりした。その後も、隆盛を始めた寺院に対抗するため、本地垂迹説が起こり、神社も寺院風の建築色をより取り入れ、入母屋屋根・寄棟屋根を採用したり、楼門を設けるなどした。春日造・日吉造・八幡造などがそれである。

 これら日本の建築は、時代を問わず雨の多い日本の気候にマッチしたもので、その屋根は二つ以上の勾配のある面で構成され庇が長い。このような勾配のある屋根は、勾配屋根といわれる。西洋建築は、勾配のない、庇のない屋根で、陸屋根といわれる。

 この日本の建物の屋根の分類は、切妻屋根、入母屋屋根などの「屋根の形」で分類するのが一般的であるが、その他にも「屋根の面(平地と呼ぶこともある)の形」「破風の形」「破風板の形」でも分類できる。これら4つの形で大まかに分類したのが下表であり、屋台、および、神社・寺院についてそれぞれどんな屋根があるか調べた。
注1)屋根の呼び方は、例えば “ 切妻 ”あるいは“ 切妻屋根 ”と呼ばれる。広辞苑によれば、切妻は「切妻構造の屋根。また、広くはそのような屋根をもつ建物の様式」、また、切妻屋根は「棟を界として両方に流れを持つ、書物を半ば開いて伏せた形の屋根」とあり、“ 切妻 ”は「屋根だけでなく、建物の様式」もいう場合がある。ここでは、屋根の呼び方を “ ・・・屋根 ” と呼ぶ。
  2)大唐破風屋根は、一般の建物には少なく、その名称が載る資料は少ないが、屋台の屋根では非常に多く、屋根の形状の1種類として入れた。
  3)例としてあげた屋台や神社・寺院の屋根などの絵は、見たものだけを取り上げたが、見つけ次第追加する。
  4)神社の本殿(神霊を奉安する場所)の屋根は、ほとんどが切妻屋根で、一部に入母屋屋根があるが、寄棟屋根は皆無といわれる。一方、寺院の主要な建物である本堂・金堂などの屋根は、入母屋屋根か寄棟屋根であり、切妻屋根は皆無である。
  5)俊乗房重源:1121〜1206。鎌倉初期の浄土宗の僧。房号は俊乗、号は南無阿弥陀仏。17才で全国の寺を訪ね修行を積み、醍醐寺で密教を学んだ。仏教以外にも博学で、実践的で、後白河法皇に惚れ込まれた。仁安2年(1167)に宋へ入り、帰ってからは東大寺の再建の中心人物として、南大門に天竺様式建築を残すと共に、各地に念仏道場を開いて不断念仏をおこした。
  6)不断念仏:昼夜絶え間なく念仏を唱えること。
  7)「屋根の形」には他に、半切妻屋根、方形屋根(宝形屋根)、六注屋根、八注屋根、錣屋根などもあるが、屋台にはなく省いた。
屋根の4つの分類方法
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屋根の形
での分類
屋根の全体の形でわける方法で一般的によく耳にする名前。
切妻屋根
(きりづまやね)
古くは、宮殿や神社の建築は、切妻構造の屋根であった。切妻造を「真屋・両下(まや)」と呼び格の高い建物とされ、入母屋造や寄棟造の建物に比べて、切妻構造の屋根の建物が最高の形式であった。
屋台の屋根には少なく、切妻屋根の屋台は、高山祭と古川祭で、他には2〜3の祭りに1台程度である。
屋根に反りのあるもの、反りのないものがある。屋台の屋根には両方あるが、神社の屋根は、ほとんど反りがない。
入母屋屋根
(いりもややね)
入母屋四棟屋根・
入母屋八棟屋根
(いりもやよつむね・
やつむねやね)
上部の切妻屋根の下部に寄棟屋根を合成した型で、寺院には最も多い。中国・唐の影響により寺院建築では、切妻造→入母屋造→寄棟造の屋根が格が上になった。後には、重要な堂宇はほとんど入母屋造になった。
四棟屋根は、上部にクロスした切妻屋根を置き、その下部に寄棟屋根を合成した型。
八棟屋根は、四棟屋根の入母屋屋根の部分に唐破風などの軒を付けたもので、四棟屋根より、より重厚な威厳を持ったものになる。四・八棟は、屋台の屋根としては、非常に少なく、どちらも八王子まつりに見るだけである。
寄棟屋根
(よせむねやね)
四注屋根
(しちゅうづくり)
奈良時代に多く用いられた形で、四方向の面を組み合せ、大棟の両端から四隅に降棟の降りている屋根。地域により、正方形平面で1点集中のものを指すことがある。
四注屋根は、正方形の寄棟屋根で、中心に降棟が集中する型。
屋台に、例はない。
大唐破風屋根
(おおからはふやね)
唐破風屋根・
棺棟屋根
屋根全体が唐破風構造になっている屋根で、屋台では、人形山車の囃子座、舞台屋台、屋根屋台など一番多い屋根の型である。
神社・寺院では、手水舎など小さな建物に見られ程度で、大唐破風屋根や棺棟屋根の名前は、建築関係の書籍にはない。一部の屋台で使われている程度である。
屋根の面の形
での分類
二つ以上の面で構成される日本建築の屋根の面の形でわける方法。
直線屋根 屋根を構成する面が、平面の屋根。屋台に、例はない。
照り屋根
(てりやね)
反・反り屋根
(そりやね)
開いた本を伏せたように、下へ半円形に反った形の面の屋根。
山口県岩国市の錦帯橋や日光東照宮の神橋などのように上に反った橋を“ 反橋 ”ということもあることから、照り屋根というのが間違いが少ない。このHPでは、主に照り屋根とする。
起・起り屋根
(むくりやね)
閉じた本を枕の上に置いたように、上に円形(反りが同方向)の面をした屋根。
屋台に、例はない。
反起屋根
(そりむくりやね)
屋根の上部で起り、下部で照る(下反り)形の面の屋根。大唐破風屋根もこれにあたるが、大唐破風屋根を反起屋根とする文献はない。
錣屋根
(しころやね)
兜の鉢の左右から後方に垂れて頸を覆う錣に似ていることからつけられた。屋根の途中で段をつけ軒先のようにし、その下から続けて軒へ葺いた屋根。葺き方の一種とすることが多いが、屋根の一種類とする文献もある。屋台に、例はない。


破風の形
での分類
破風全体の形で分類。
切妻破風
(きりづまはふ)
切破風・妻破風
切妻屋根の破風をいう。
神社建築では、もっとも多い破風。
唐破風
(からはふ)
軒唐破風
(のきからはふ)
屋根の合掌部が丸い山形になっている。中央部には、大棟を隠す懸魚が飾られている。
唐の字が使われているが日本独自のもので、鎌倉時代に始まり、桃山時代には千鳥破風とともに多用され、桃山建築の特色になっている。屋台に最も多く、神社・寺院にも多い種類の破風。軒に唐破風の屋根を載せたものを軒唐破風という。
千鳥破風
(ちどりはふ)
据破風
(すえはふ)
障泥破風
(あおりはふ)
屋根の中腹に載せた切妻屋根の破風をいい、入母屋屋根に多い。起源は、春日造本殿に始まるといわれ、室町時代に多く用いられた。
屋台に、例はない
直破風
(すぐはふ)
流れの線が直線の破風板。
屋台に、例はない。
流破風
(ながれはふ)
招破風
(まねきはふ)
左右の破風板の一方が長く、他方が短い破風。
屋台に、例はない。
破風板の形
での分類
破風板の形でわける。屋台にはないが、神社・寺院には左右の破風板の長さが異なる建築があり、前項の破風の形と別分類とした。
照り破風板
(てりはふいた)
反・反り破風板
(そりはふいた)
流れの線が下へ反る破風。
起・起り破風板
(むくりはふいた)
流れの線が上へ反る破風。
屋台に、例はない。
直破風板
(すぐはふいた)
流れの線が直線の破風板。
屋台に、例はない。
注1)破風(はふ)とは、屋根の妻の合掌形の装飾板の部分をいい、妻の垂直な面に風が当たると左右に分かれることから破風という。破風の前面につけられた板を破風板という。
 破風は、もともと板張りや漆喰で内部を保護したり、棟木や桁を隠したりする構造的な目的で考えられたのが、妻飾りとして発達した。独自のデザイン的な進化を遂げた。
黄色枠は、神社・寺院を示す。
切妻屋根の屋台:高山祭 切妻屋根の神社:八坂神社拝殿 切妻破風の神社の手水舎
切妻屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
切妻屋根・直線屋根
切妻破風・直破風板
切妻屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
入母屋屋根の屋台:高山祭 寺院に多い、入母屋屋根の堂宇
入母屋屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
入母屋屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
屋台では珍しい入母屋四棟屋根 屋台では珍しい重厚な入母屋八棟屋根 入母屋四棟屋根・照り屋根
入母屋四棟屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
入母屋八棟屋根・照り屋根
切妻屋根・照り破風、起破風・軒唐破風板
入母屋四棟屋根・照り屋根
切妻破風・照り破風板
寄棟屋根の寺院 四注屋根の寺院 反起屋根
寄棟屋根・照り屋根 四注屋根・直線屋根 反起屋根
大唐破風屋根の山車 大唐破風の手水舎 起屋根
大唐破風屋根・反起屋根
唐破風・唐破風板
大唐破風屋根・反起屋根
唐破風・唐破風板
(切妻屋根とはいわない)・起屋根
起破風・起破風板
秩父夜祭の屋台の唐破風 成田山新勝寺の手水舎 屋根の中腹につく千鳥破風
軒唐破風 軒唐破風 千鳥破風
直破風 流破風 錣屋根
切妻屋根・直線屋根
直破風・直破風板
切妻屋根・照り屋根
流破風・起破風板
寄棟屋根
錣屋根
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