屋台の屋根
 祭りの屋台(山車・曳山・だんじりなど全体をいう)には、屋根が付いているものが多い。しかし、屋台は、雨の日にビニール・シートで全体を覆って曳き回す祭りもあるが、一般的には雨の日は屋台蔵に納めて外には出さなかったり、シートを被せて置いておく祭りが多く、雨に対する屋根は必要ない。また、屋根で屋台を雨から守ろうとすれば、とてつもなく大きなものが必要となる。屋根の実用的な必要性があるとすれば、囃子手を日差しから守る日除けとしての役割程度である。
 江戸時代の天下祭などの番附や祭りを描いた絵図、浮世絵などによれば、当時の人形山車に屋根の付いたものはなく、現在の人形山車の多くに屋根が付いている囃子座は、天井のない欄間仕立てになっていたり、テント様の幕を棒で支えて張っているものが見られる程度である。
 現在の人形山車に付いている屋根は、改造の際に追加されたり、最初から屋根を付けて新しく作られたものである。
 一方、当時の踊り屋台には、屋台全体をすっぽりと覆う大唐破風屋根や入母屋屋根が付いている。現在の舞台屋台にも、全体を覆う大きな屋根が付いているが、舞台屋台も雨の日に引きまわす祭りは少ない。
 結局、屋台の屋根は、屋根の持つ実用的な目的よりも、屋台をより豪華に晴れやかにするための飾りとしての役割がその目的といえる。
 その屋台の屋根は、神社・寺院など古来の日本建築の屋根に倣っており、いろいろな形状や全体を覆うような大きなものや部分だけを覆うものなど大きさもいろいろな屋根が載っている。屋台の屋根を下記 index の項目について、神社・寺院のそれと比較しながら見てみる。
index 屋台の屋根 目次 屋根のない山車
人形山車の屋根
舞台屋台の屋根
屋根屋台の屋根
屋根のない山車
 天下祭の最盛期には、人形山車、踊り屋台、底抜け屋台が3点セットで出たという。天下祭の中後期には、下左絵のような人形山車が主流になり、見物の群衆の頭上高くに目立たせるために、高い枠の上に人形を載せ、将軍の謁見を得るために江戸城へ出入りし、いくつもの城門を潜るために、人形や枠を上下できるようにした構造になっている。この人形山車には、屋根のないものがある。
 この屋根のない人形山車は、現在も江戸時代などの山車が改造されないで屋根のないままだったり、新しい山車でも屋根を付けないものがあり、その割合は、144台中34台、24%である。

 中絵の江戸時代初期に多かった江戸型の原型ともいう形の山車は、山車の中心に1本の柱を立て、人形や万灯を載せた構造で屋根は付いていない。

 右絵の山車は、5人程度の葛西囃子系の囃子手が乗る江戸型山車に比べて、10人以上の囃子手が乗るため、囃子座が広く、1層目全体が囃子座になっており、また、人形も江戸型に比べて非常に大きいため、2層目の人形座も広く取られており、屋根は付いていない。
屋根のない江戸型人形山車 古い一本柱型の山車には屋根はない 江戸型とは違う道をたどった佐原の大祭の屋根のない山車
江戸型の人形山車には、屋根が付いていない。 初期の天下祭に盛んに出された山車のDNAを持つ三熊野神社大祭の祢里は、中心に標木(しんげん棒)と呼ばれる柱に、花差し、万度、鍋蓋を差し込み、鍋蓋の上に人形などが載せられており、屋根はない。 佐原の大祭の山車は、大きな人形を載せており、屋根はない。人形は、しゃがむ格好で伸縮し、下層へ下がることはない。
1層目は吹き抜けで大人数の囃子手を乗せている。
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 現在の人形山車には、前にも述べたように76%に屋根が付いている。左絵のように囃子座にだけ屋根が付いているものが主流であるが、中絵のような山車の全体を覆う大きな屋根に穴をあけて人形枠を突きだした形のものもある。上段の人形を載せた枠は一般に上下するが、しないものもある。
 右絵は、成田祇園祭に見られる山車で、前項の屋根のない山車と同じように1層目全部を囃子座として使っているが、2層目と同じ高さの前部に屋根を付けた山車で、前項の屋根のない山車を一捻りした形となっている。
現在のほとんどの江戸型人形山車には、囃子座に屋根がつく 大唐破風を突き破り、人形を載せる鉾が出ている山車 多人数が乗る囃子座の上を前後にわけ、後部に人形を載せ、前部に屋根を付けた、成田祇園祭の山車
現在、江戸型といわれる人形山車には、前部の囃子座に屋根が付いたものが多く、付かない山車は珍しい。
屋根は、ほんとが大唐破風屋根で、中に大唐破風屋根が横に二連並んだ山車もあるが、切妻屋根はない。
人形山車の中に、1層目全体が囃子座になっているものがあり、1層目全体を覆う大唐破風屋根を突き抜けて人形を載せた鉾が出ている。
上絵は、藤沢鵠沼皇大神宮例祭の山車で、この場合は、人形や鉾は一本柱で支えられており、上下はしない。
沼田祇園祭の山車は、同じ大唐破風屋根を持つが、屋根から突き出た鉾は、上下する構造である。
1層目全体が囃子座になっている山車でも、成田祇園祭の山車のように、江戸型を模して、前部だけに大唐破風屋根を載せた山車もある。
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 舞台屋台は、江戸時代の踊り屋台の流れもあり、例外なく屋根が付いており、その形状も多彩である。。
 屋台の1層目全体が囃子座になっているものと前部が囃子座、後部は幕などで囲った楽屋になったものがあるが、屋根は屋台全体を覆う大きな大唐破風屋根が多い。中には大唐破風屋根に軒の付いたのも、大唐破風屋根のサイドに軒唐破風が付いたもの、入母屋屋根などもある。


(右絵は、天下祭の踊り屋台。出典は、江戸型山車のゆくえ)
もっとも一般的な、舞台山車の大唐破風屋根 大唐破風の前部に軒を付けた屋台。軒は平屋根や唐破風屋根などがある 豪華な入母屋四棟屋根の屋台
もっとも一般的な大唐破風屋根の屋台。屋根は、屋台全体を覆う大きさがある。
1層目は、絵のように全体が囃子座になっているものや、前部が囃子座、後部は幕などで囲われた楽屋になっているものがある。
楽屋の後部は、大唐破風屋根で覆われ、前部の囃子座には庇が出ている青梅大祭の屋台。
青梅大祭には、他に大唐破風屋根が囃子座と楽屋の上で二重になっているものもある。
絵は、八王子まつりの山車で、囃子座を含む全体を大唐破風屋根が覆い、後部の楽屋の上に入母屋四棟屋根が載る。
他に大唐破風屋根は囃子座の上だけで、楽屋の上には入母屋四棟屋根が乗るもの、また、楽屋の上に入母屋八棟屋根が載る山車もある。
切妻屋根に唐破風の軒が付いた屋台 大唐破風屋根の側面に、軒唐破風が付いた秩父夜祭の屋台 安房国司祭・やわたんまちの明神丸
野外劇で知られる烏山町山あげ祭の屋台の影響を受けている大子町の十二所神社春季祭礼の屋台は、後部の囃子座には切妻屋根を載せ、前部には大唐破風屋根が載る珍しい屋根である。 絵の秩父夜祭の笠鉾は、全体を覆うほどではないが大きめの大唐破風屋根の平に大きな軒唐破風屋根が付いている。 大唐破風屋根の前に唐破風屋根が付く珍しい安房国司祭・やわたんまちのお船・明神丸。
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 屋根屋台は、屋根を4本の柱で支え、上下する構造にした(上下しないものもある)もので、屋根の下や1層目の前面の棚に人形が載っている屋台もある。しかし、この場合の人形は、人形山車の人形山車と比べると小さく、あくまでも、屋根が屋台の意匠としての重要な要素である。
 4本の柱で支えた屋根以外に、2層目の高さの前部に唐破風屋根を付けた山車もあり、その下は前棚と呼ばれ、人形が飾られている。
 屋根の形は、大唐破風屋根が多いが、切妻屋根、入母屋屋根、大唐破風屋根+大唐破風屋根、切妻屋根+大破風屋根など多彩である。
 屋根屋台は、中部地区に多いが、関東地区にも少ないが富士宮秋まつりや深谷まつりなどにもあり、その屋根の形もいろいろある。
上下する大唐破風屋根と固定された唐破風屋根がついたはんだ山車まつりの山車 大唐破風屋根の犬山祭の山車 豪華な屋根飾りが付いた切妻屋根が上下する高山祭の屋台
上下する4本の柱で支えられた大唐破風屋根と前部の前棚と呼ばれる舞台の上に唐破風屋根が付いているはんだ山車まつりの山車。 大唐破風屋根が4本の柱で高く支えられた犬山祭の山車。屋根は上下しない。 切妻屋根が上下する絢爛豪華な高山祭の屋台。高山祭・古川祭は、ほとんどが切妻屋根の屋台であるが、その他、富士宮秋まつり、深谷まつりにも各1台ある。
珍しい入母屋屋根の高山祭の屋台
上下する4本の柱で支えられた入母屋屋根の高山祭の屋台。 前部の囃子座には唐破風屋根、後部には4本の柱で支えられた切妻屋根の非常に珍しい富士宮秋まつりの屋台。
屋台の屋根 屋根の形状  屋根の飾り 屋根各部の名前
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Page Last Updated 2005.7.10
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