からくり人形師
玉屋庄兵衛
 愛知・岐阜県には屋台のからくりが多く、「からくり人形の宝庫」などともいわれている。例えば、愛知県には約125台の屋台があり約370体のからくり人形が現役だという。
 これらのからくり人形のうち玉屋庄兵衛が作ったものが多い。逆にいえば、9代におよぶ玉屋庄兵衛がいたからこそ愛知・岐阜県のからくり人形が隆盛し、また、現代まで生き残っているといっても過言ではないだろう。

 玉屋庄兵衛の初代は、もともとは竹田系のからくり師であったともいわれ京都で人形を作っていたが、享保7年(1732)に名古屋東照宮伝馬町の林和靖車の鶴のからくりを山本飛騨掾が人形を、庄兵衛は仕掛けを担当したことに始まり、そのからくりのメンテナンスのために享保19年(1734)に名古屋玉屋町に移り住み、町名から玉屋庄兵衛と名乗るようになったという。
 それ以降、今も活躍中の9代目玉屋庄兵衛まで延々と約270年続いている。この間、初代〜5代目までは弟子の中から襲名していたが、それ以降、大正時代の6代目からは高科家が世襲的に襲名している。7代目は養子で入り婿か両養子だったかはわからないため6代目と7代目に血縁があったかどうかはわからないが、7代目以降は血縁関係にある。
 4代目については、経歴・作品とも情報がなく、「4」を嫌って3から5代目へ飛ばしたのかもわからない。

 作品には、屋台からくりと座敷からくりがある。屋台からくりは、綱で操るものだけでなく、ぜんまいの動力で単独で演技する「綾渡り」とも呼ばれる高度な技術の人形も手がけた。座敷からくりは、7・8・9代目が力を入れたからくりで、7代目が寛政8年(1796)に細川半蔵が書いた「機巧図彙」に載っていた「茶運人形」をもとに復元したのが有名である。その他、「独楽廻し」「品玉人形」「春駒」「弓曳童子」などがある。

 参考文献:千田靖子著「からくり人形の世界」、9代玉屋庄兵衛監修「からくり人形師 玉屋庄兵衛の世界展〜伝承と形象の技のすべて〜」(以下「世界展」という)、半田山車祭り保存会監修「半田の山車ガイドブック」(以下「ガイドブック」という。
 文献により異なる記載が多いため、「世界展」を基に異なる内容をできるだけ併記した。
代 目 年 号 西暦  特記事項
初 代 享保19年 1734 京都から名古屋玉屋町へ移住。
2代目 作品:文化8年(1811)小牧市中町文字書き人形製作した記録あり。
文政2年 1819 没(出典:Wikipedia)
3代目 経歴などの情報なし。作品:文政10年(1827)。
4代目 いたのかいなかったかも含め作品・経歴など一切の情報なし。
5代目 本名:荒川正兵衛。作品:文政10年(1827)〜文久3年(1963)。
明治21年 1888
6代目 本名:高科正芳。旧尾張藩士の家系に生まれた(出典:Wikipedia)。玉谷・正兵衛の銘もある。
作品:明治29年(1896)〜昭和3年(1928)。
大正11年 1922 東京小石川山車作りの岩科家より岩次郎養子入籍。
大正12年 1923 岩次郎に長男正守誕生。
大正13年 1924 岩次郎没。(7代目を継がず)
昭和5年 1930 没。正守家督相続。
7代目 大正12年 1923 誕生。本名:高科正守。作品:昭和27年(1952)〜昭和54年(1959)。
昭和5年 1930 6代目の死去に伴い7才で襲名。
昭和23年〜 1948〜 戦災で焼失した玉屋庄兵衛の代々が手がけた優秀作品の機構などを書いた「萬人形集」を「萬人形集・二」として復元した。
昭和29年 1954 正守に3男庄次(9代目)誕生。
昭和45年 1970 機巧図彙をもとに茶運人形復元。
昭和50年 1975 CBCクラブ文化賞受賞。
昭和63年 1988
8代目 昭和25年 1905 7代目高科正守の長男として正夫誕生。
作品:平成元年(1989)〜平成5年(1993)。
昭和63年 1988 7代目父正守の死亡に伴い8代目を襲名。
平成4年 1992 第14回都市文化奨励賞受賞。
平成7年 1995 NHK東海いぶき賞受賞。
弟庄次に玉屋庄兵衛の名を譲り、初代萬屋仁兵衛と称した。
9代目 昭和29年 1954 7代目高科正守の3男庄次誕生。作品:平成7年(1995)〜平成15年(2003)
7代目に入門。玉屋庄次郎の名前で修行。
平成7年 1995 8代目兄正夫の死亡に伴い9代目を襲名。
平成10年 1998 田中久重の「弓曳童子」復元。
平成12年 2000 第22回都市文化奨励賞受賞。
平成13年 2001 第16回パチンコ大衆文化・福祉応援賞受賞。
平成14年 2002 東海テレビスポーツ・芸能選奨受賞・
平成15年 2003 名古屋市芸術賞受賞。
第23回伝統文化ポーラ賞受賞。
初代・玉屋庄兵衛
 山本飛騨掾が享保18年(1733)に作った名古屋東照宮伝馬町の林和靖車(りんなせいしゃ)の鶴のからくりを世話するために名古屋の玉屋町に移り住んだ
 山本飛騨掾が人形を、初代庄兵衛がからくりの機構部を担当した説もある。
 唯一の作品であった林和靖車の鶴のからくりは、戦災で焼失した。
 現在は、今泉楳渓(梅渓)筆「林和靖車」の掛け軸と下記鯉のみが残る。
登竜門:大津祭  
人形名 鯉のからくり
祭 名 大津祭:龍門滝山
屋台名 鯉は3点あり、最も古いものに「宝暦12年(1762)工人檜物師庄兵衛」の銘があり、年代的にも初代作ではないかと推察されている。絵の現在の鯉は、平成13年後藤秀美作。
からくり部分は、安永4年(1775)林孫之進作。
二代目・玉屋庄兵衛
 作品は、下記5例のからくりが残る。現在までに幾多の修復などはされているだろうが、200年近くも前の貴重なものである。
 どの人形も愛嬌のある表情で秀作である。
麾振り人形:尾張西枇杷島まつり
人形名 麾振り人形(前人形)
祭 名 尾張西枇杷島まつり
屋台名 西六軒町:紅塵車
備 考 文化9年(1812)作。
「世界展」には、ページにより2代目(P94)、あるいは、3代目作(P18)とある。
人形名 布袋人形
麾振り人形 
唐子人形 文字書き人形
麾振り人形
唐子人形
祭 名  有松祭 元若宮祭 小牧秋葉祭 元若宮祭
屋台名  布袋車 布袋車 中本町 布袋車
備 考 3代目作の説もある
三代目・玉屋庄兵衛
 作品は少なく、文献によっては作品はないとするものもある。「世界展」によれば下記2作品が残る。
梅樟戯:犬山祭 関羽 雲長:尾張西枇杷島まつり
人形名 梅樟戯 関羽 雲長
祭 名 犬山祭 尾張西枇杷島まつり
屋台名 外町:梅樟戯 西六軒町:紅塵車
備 考 文政10年(1827)作。
離れからくりの先駆的作品。
関羽 雲長・鳥舞人形・太鼓撃ち唐子は文政10年(1827)作。
麾振り人形(前人形)は、 「世界展」では、ページにより文化9年(1812)の2代目(P94)、あるいは、3代目作(P18)とある。
五代目・玉屋庄兵衛
 12作品を残す。作品の特徴は、2体の唐子に差し金を通して遠隔操作をする仕掛けで、5代目の18番のからくりといわれている。
浦島太郎:はんだ山車まつり 桜花唐子遊び(綾渡り):はんだ山車まつり
人形名 猩々の面被り(前棚人形) 神 官 神 官 (高砂)
麾振り人形
祭 名 はんだ山車まつり はんだ山車まつり 尾張津島秋まつり
屋台名 亀崎:中切組:力神車 亀崎:西組:花王車 七切:米之座車
備 考 安政年間(1854〜1858)作 安政年間(1854〜1858)作 明治20年5代目作。
神官は明治32年6代目作の説もある。
人形名 麾振り人形(前棚人形)
祭 名 尾張津島秋まつり
屋台名 今市場:小中切車
備 考 安政4年(1857)作
人形名 姉:小唐子人形 綾遊び(唐子2体) 綾遊び(唐子2体)
麾振り人形
麾振り人形
唐子・太閤人形
三番叟
祭 名 小牧秋葉祭 横須賀まつり 横須賀まつり 大野祭り 横須賀まつり
屋台名 聖王車 公通組:八公車 北町組:楓童車 橋詰町:紅葉車 大門組
備 考 安政2年(1855)作 嘉永6年(1853)作 安政年間
(1854〜1859)作
安政年間
(1854〜1859)作。
昭和50年に7代目が修理。
人形名 綾遊び(唐子2体) 麾振り人形 大小唐子人形
神子舞人形
祭 名 竹鼻まつり 名古屋:牛立天王祭 武豊町
ふれあい山車まつり
屋台名 福江町 牛頭天王車 長尾部
小迎:鳳凰車
備 考
六代目・玉屋庄兵衛
 17作品を残す。6代目の作品の顔は、玉屋庄兵衛のなかでも秀作といわれる。とくに知多の山車の三番叟・巫女・太平楽などの前棚人形のにその技を発揮した。
浦島太郎:犬山祭 浦島太郎:はんだ山車まつり 太平楽:はんだ山車まつり
人形名 浦島 浦島の面被り 太平楽
祭 名 犬山祭 はんだ山車まつり はんだ山車まつり
屋台名 新町:浦島 亀崎:中切組:力神車 下判田:中組
備 考 昭和3年6代目玉屋庄兵衛作。
絵は、平成13年に9代目玉屋庄兵衛が全面改修したもの。
巫女の舞:はんだ山車まつり 三番叟:はんだ山車まつり 唐子遊び:尾張津島秋まつり
人形名 巫女の舞 (前棚人形) 三番叟 (前棚人形) 麾振り人形
祭 名 はんだ山車まつり はんだ山車まつり 尾張津島秋まつり
屋台名 下半田:南組:護王組 協和:砂子組:白山車 七切:北町車
備 考 大正7年作 明治31年
人形名 神功皇后
武内宿禰
麾振り人形 
唐子人形 高 砂 神功皇后
武内宿禰
麾振り人形
湯取神事 応神天皇
武内宿禰
祭 名  田原まつり 竹鼻祭り 竹鼻祭り 有松祭 小牧秋葉祭 武豊町ふれあい山車まつり
屋台名 本町:神功皇后車  上町 中 町 西町:神功皇后車  上之町:湯取車 長尾部:下門:八幡車
備 考 明治29年作 明治30年 昭和13年作 明治35年作 明治39年作
人形名 湯取り神事 麾振り人形
従者人形
巫女人形 麾振り人形
童子人形
三番叟
祭 名 はんだ山車まつり 大垣まつり 常滑祭り 大垣まつり はんだ山車まつり
屋台名 亀崎:東組:宮本車 岐阜町:愛宕山 北条:神明車 新町:神楽山 下判田:北組:唐子車
備 考 大正年間 大正8年作 大正9年作 大正15年作
七代目・玉屋庄兵衛 伊藤呉服店(現松坂屋)
 6代目に比べるといくらか少ない11作品が残る。「機巧図彙」をもとに「茶運人形」を復元する。京都祇園祭の蟷螂山復元し、かまきりのからくりに昭和56年から巡行に参加する。
龍神:高山祭・春の山王祭 布袋:高山祭・秋の八幡祭 梅樟戯:犬山祭
人形名 龍神・唐子 布袋・唐子の綾渡り 梅樟戯
祭 名 高山祭・春の山王祭 高山祭・秋の八幡祭 犬山祭
屋台名 龍神台 布袋台 梅樟戯 (外町)
備 考 昭和52年復元 昭和52年復元。
初代の人形は、文化12年(1815)の箱書きと「京都西六条・せんばいからくり並に舞台道具品々万人形細工師 川崎屋大江卯蔵」とある。
文政10年(1827)3代目玉屋庄兵衛作、衣装は伊藤呉服店(現松坂屋)が調整。
1976年に7代目玉屋庄兵衛が修理。
羅陵王:はんだ山車まつり 麾振り人形:はんだ山車まつり 座敷からくりー茶運人形
人形名 蘭陵王 麾振り人形 (前棚人形)
茶運人形
祭 名 はんだ山車まつり はんだ山車まつり 座敷からくり
屋台名 下半田:祝鳩車 下半田:東組:山王車
備 考 「ガイドブック」では7代目作、「世界展」では昭和57年9代目作。 「ガイドブック」では7代目作、「世界展」では昭和55年9代目作。 近年、土佐のからくり師・細川半蔵が著した寛政8年(1796)に、和時計とからくりの図面入り解説書「機巧図彙」をもとに、7代目が茶運人形を復元した。9代目は、さらに進化した茶運人形を作った。
絵は、2007年に国立科学博物館で開催された「大からくり展」に出品されたもの。
人形名 三番叟(前棚人形) 宝 船
(恵比寿・大黒は
作者不詳)
神功皇后・武内宿禰 猩 々 唐子の綾渡り
麾振り人形
祭 名 稲荷社の祭礼 名古屋市広井神明社祭 大垣まつり 大垣まつり 横須賀まつり
屋台名 碧南市大浜・中区 二福神車 岐阜町:愛宕山 綾野町:猩々山 北町組:北町
備 考 昭和25年大四日市まつり:袋町に作ったものを昭和49年に碧南:中町へ譲渡、昭和51年7代目修理。 昭和30年作 昭和39年 昭和44年 5代目安政年間(1854〜1859)に製作。昭和49年に7代目復元。昭和56年に8代目が修理。
人形名 かまきり 石 橋
祭 名 京都祇園祭 桑名市石取祭
屋台名 蟷螂山 今片町
備 考 昭和54年復元 昭和54年作
八代目・玉屋庄兵衛
 からくり時計・紅葉刈人形・からくり御所人形など屋台のからくり人形以外のからくり人形を多数手がける。屋台のからくり人形は、7作品。
三番叟:古川祭 牛若丸:古川祭
人形名 三番叟 牛若丸・弁慶
祭 名 古川祭
飛騨古川まつり会館
古川祭
飛騨古川まつり会館
屋台名 単 体 単 体
備 考 平成4年作
自動運転
平成5年作
人形名 唐 子 三番叟 猩 々 羽 衣 橋弁慶
祭 名 大四日市まつり 犬山祭 犬山祭 犬山祭
屋台名 石取車 ?町 岐阜県御嶽町
備 考 平成2年作 平成2年作 平成3年作 平成6年作 平成3年作
九代目・玉屋庄兵衛 : 玉屋庄次郎
 平成7年に玉屋庄兵衛を襲名するまでは、玉屋庄次郎として製作。
石橋:高山祭・春の山王祭 浦島太郎:犬山祭 淡路島:犬山祭
人形名 石 橋 浦島太郎 淡路島
祭 名 高山祭・春の山王祭 犬山祭 犬山祭
屋台名 石橋台 新町:浦島 老 松 (寺内町)
備 考 玉屋庄次郎昭和59年復元 昭和3年6代目作
2001年9代目が全面改修
天保4年(1833) 作
1983年 9代目玉屋庄兵衛 修復
役小角大峯桜:はんだ山車まつり 鵺(源 頼政 弓張月の対峙):名古屋出来町・筒井町天王祭 麾振り人形:はんだ山車まつり
人形名 役小角大峯桜 鵺 (源 頼政 弓張月の対峙) 麾振り人形 (前棚人形)
祭 名 はんだ山車まつり はんだ山車まつり はんだ山車まつり
屋台名 乙川:南山:八幡車 西成岩:西組:敬神車 下半田:東組:山王車
備 考 平成19年
9代目玉屋庄兵衛 復元
9代目玉屋庄兵衛 作 昭和55年(1980)玉屋庄次郎作
羅陵王:はんだ山車まつり 創作からくり−からす天狗 座敷人形−独楽廻し
人形名 蘭陵王 からす天狗 独楽廻し
祭 名 はんだ山車まつり 創作からくり 座敷からくり
屋台名 下半田:田中組:祝鳩車
備 考 「ガイドブック」では7代目作、「世界展」では昭和57年玉屋庄次郎作。 平成12年作。
牛若丸・小天狗・大天狗が乱杭渡りと小天狗が宙に浮き、からすに変身する。
絵は、2007年に国立科学博物館で開催された「大からくり展」に出品されたもの。
平成8年作。
実際に独楽が廻る。。
絵は、2007年に国立科学博物館で開催された「大からくり展」に出品されたもの。
人形名 唐子の綾渡り 桃太郎
祭 名 稲荷社の祭礼 桑名市石取祭
屋台名 碧南市・中区:中之切車 今北町
備 考 天明8年(1788)竹田籐吉作の人形を昭和60年に玉屋庄次郎が復元。 昭和56年
玉屋庄次郎作
其の一 其の二 其の三
   
Page Last Updated 2008.2.1
Page Last Updated 2008.1.20